【ご報告】厚生労働大臣に意見書を提出しました ~次期国民健康づくり運動プランにおける目標(案)に関する意見~

令和4年1月25日

厚生労働大臣
加藤 勝信 殿

 日本精神保健看護学会理事会

次期国民健康づくり運動プランにおける目標(案)に関する意見

長引くコロナ禍においては、多くの人々が精神の不調に悩まされています。さらにこの一年間は軍事紛争に伴う社会情勢の不透明さが多くの人に心理社会的影響をもたらしています。特に、減少傾向にあったわが国の自殺者が若い世代や女性において増加に転じたことは、メンタルヘルス面の支援の必要性を象徴的に表しています。

本邦においては、現在、精神的苦痛を抱える者の割合は国民の約4分の1にのぼり、COVID-19感染拡大前と比べてうつ病・不安症ともに25%以上増加したと推定されています。減少傾向にあった我が国の自殺者が、若い世代や女性において増加に転じたことは、経済的困窮や雇用の不安定さ、DVなどの暴力の影響がこれらの世代に大きかったことを示しています。さらに、ひきこもり状態にある人は約110万人と15-65歳人口の70人に一人、小中学生で長期欠席(不登校)の状態にある児童生徒数は過去最多という状況にあります。

このような中、医療関係者のメンタルヘルスについても、多くの研究結果が集積されてきました。看護師であることは、女性や若年であること、第一線で働く人々という因子と並んで、メンタルヘルスにおけるリスク因子の一つと分析されています。日本精神保健看護学会では、メールや電話相談を用いて、保健医療職者のメンタルヘルスを支えるためのガイドラインを作成し、医療や福祉現場で働く人々の支援にあたってきました。

 

現在厚生労働省で開催されている厚生科学審議会(次期国民健康づくり運動プラン(令和6年度開始)策定専門委員会)において議論されている「次期プランにおける目標(案)」では、現行プランの中カテゴリーに位置づけられている「こころの健康」が削除されています。また、「こころの健康」に関連する目標の小項目数は、4項目から3項目に削減される案となっています。しかし先述の通り、「こころの健康」に関連する我が国の状況を鑑みると、次期国民健康づくり運動プランでは、現行プラン以上に「こころの健康」に重点を置いた内容にすべきだと考えます。

次期プランにおいて、現行プランの中カテゴリーに位置づけられる「こころの健康」を削除することや「こころの健康」に関連する小項目を削減することは、国民の健康づくり運動においてこころの健康の優先順位が低いかのような誤ったメッセージを与えかねません。

特に、世界保健機構(WHO)がこころの健康の指標として最重要項目の一つとしている「自殺者の減少」が項目から削除されていますが、この項目は、自殺がわが国の15歳から39歳の死因第1位であることなどを鑑みると、指標として堅持する必要があると考えます。

 

以上のことから、「次期プランにおける目標(案)」の2-2(5)、もしくは2-3(1)に、独立した中カテゴリーの目標として「こころの健康」を位置づけ、そのなかに「自殺者の減少」、「心理的苦痛を感じている者の割合の減少(2-3に既に記載)」、「メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合の増加(3‐1に既に記載)」及び「心のサポーター数の増加(3‐1に既に記載)」の4つを目標項目とすることを提案いたします。

 

一般社団法人日本精神保健看護学会
理事長  安保 寛明
副理事長 萱間 真美
理事   畦地 博子
理事   遠藤 淑美
理事   大川 貴子
理事   岡田 佳詠
理事  香月 富士日
理事  寺岡 征太郎
理事  永井 優子
理事  松下 年子
理事  松田 光信
理事  宮本 有紀
理事  大熊 恵子
理事  矢山 壮
監事  荻野 雅
監事  多喜田 恵子